人生をよりよく生きる ライフ&エンディングメディア

Features

Back
  • ケア
  • 介護
  • グリーフケア

喪失からの悲嘆を和らげるために。 国内でも徐々に広がりを見せる「グリーフケア」/後編

遺された家族に対して続くケアの取り組み

「ACP」とともに昨今広まりつつある「グリーフケア」について、実際に取り入れている施設・社会福祉法人蓬莱会「特別養護老人ホームケアプラザさがみはら」の施設長を務める大塚 小百合さんへのインタビュー企画。本企画の前編記事では「グリーフケア」のご紹介とともに、大塚さん自身が遺族という当事者として感じたケアの重要性について記してきました。

参考記事:【用語解説】「ACP/アドバンス・ケア・プランニング」

参考記事:【用語解説】「グリーフケア」

大塚さんが経験した病院でのケアは、亡くなられたお母さんのみならず、遺された家族に対しても手厚いものだったそうです。そのひとつが、「追悼会」と呼ばれる独自のセレモニーがありました。

「母が亡くなった後、残された家族は大きな喪失感を抱えていましたが、亡くなってからはバタバタで、主治医の先生やスタッフの方とお話しもできないまま病院を後にしました。悲しむ暇もなく、お世話になった皆さんに対しても心残りがあったのですが、翌年に病院で『追悼会』と呼ばれる会を行なってくれたんです。前の年にその病院で亡くなった方のご家族を招いて行われる催しで、病院長や当時の主治医の先生、看護師さんたちが勢揃いをして、亡くなった方々のお名前をひとりずつ読み上げながら、亡くなった方に対する病院としての思いをお話ししてくださるなど、残された家族と亡くなった方と関わってくださった病院の皆さんがあらためてお話しできる場を作ってくださったんです。そうした会に招いてくださることも驚きでしたが、お世話になった先生や病棟の看護師さんと母の思い出話をしたり、『あのときはありがとうございました』と、顔をあわせてお礼を言えたことは、遺族である自分自身がすごく気持ちが救われましたし、ひとつの区切りをつける気持ちの整理をするための大切な時間となりました。あの追悼会もグリーフケアなんだなと、今となっては思いますね」

故人を想い、共に話すこともまたケアの一環に

大塚さんの施設でも同様に、看取りケアを経て最期を迎えた方のご家族もドタバタのなかで施設を後にされる場合が多く、その後は荷物を取りに来られる程度で、施設を訪れる機会もほとんどなく、職員とゆっくり話す機会もなかったといいます。しかし、大塚さんは自身の病院での経験を経て、施設としてご家族の方の悲嘆を少しでも受け止めて軽くすることができればと考え、希望者の方を対象に「お見送り会」を行なっているそうです。

「お見送り会では担当させていただいた代表の職員が、その方との思い出を手紙にしたためてご家族の方に読み上げたり、メモリアルボックスをプレゼントしたり、一緒に過ごしたスタッフ一人ひとりがセレモニー形式でお別れの挨拶をさせていただいています。コロナ禍になっては代表職員がお手紙を書いて送るだけになりましたが、ご家族の方とやりとりをする機会を作って、故人との思い出をあらためて共有することで、少しでも喪失による悲嘆に対する癒しになればという思いで取り組んでいます。まだ国内では小さな広がりのグリーフケアですが、多死社会となったいま、こうした取り組みは徐々に医療や介護の施設でも認知されて取り入れられていくはずです。私たちもまた、施設でそうしたケアに取り組みながら、グリーフケアの認知拡大の一翼を担うことができればと考えています」

 

参考記事:喪失からの悲嘆を和らげるために。 国内でも徐々に広がりを見せる「グリーフケア」/前編

 

TEXT:中澤範龍

記事

大塚 小百合

大塚 小百合

大学を卒業後、市役所福祉職や社会福祉協議会、急性期病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)、社会福祉法人蓬莱会新規事業準備室長を経て、社会福祉法人蓬莱会「特別養護老人ホームケアプラザさがみはら」の施設長に就任。 現在は「相模原市高齢者福祉施設協議会」副会長、「相模原市在宅医療・介護連携推進会議」副会長も務める。 レギュラーを務めるYouTubeチャンネル「ゆるっとかいご」では、介護家族を応援する動画コンテンツも配信中。

Share

関連記事