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【用語解説】「ACP/アドバンス・ケア・プランニング」

こんにちは。&for usのがくです。
今回は、「ACP/アドバンス・ケア・プランニング」についてお話します。
※アドバンス・ケア・プランニングの前身とも呼べる、リビングウィルとアドバンスディレクティブについての記事はコチラ

「ACP/アドバンス・ケア・プランニング」とは?

アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning: ACP)とは、将来的に治療やケア、生活についてどのようなものにしたいかを、本人が元気なうちから家族など(周囲の大切な人)や、医療・ケア提供者と話し合い、共有し、意思決定してゆくプロセスのことです。人生観や死生観、信仰、信念などの価値観を加味しながら、治療の計画(治療しないということも含めて)を共同で作成し、必要に応じて何度も見直すことも可能です。英語のadvanceとは「事前の、前もって、あらかじめ」という意味で、careは「ケア」、planningは進行形の「計画すること」ですので、「事前ケア計画」とも訳されることもあります。また、日本においては厚生労働省がアドバンス・ケア・プランニング(ACP)のことを「人生会議」という名前に改め、広報活動をしています。

(出典:厚生労働省

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は欧米から輸入された概念であり、定義に関しては地域や団体によっても若干異なりますが、大切なことは、①プロセスであること、②患者と家族を含むケア提供者が共同で行うこと、③意思決定能力の低下に先立って行われること、という3つです。

ACPは、別記事で紹介しているアドバンスディレクティブやリビングウィルが持つ問題点を克服するための改善策として考案されたものなので、アドバンスディレクティブの進化型と言っても良いでしょう。ただし、アドバンスディレクティブを否定しているわけではなく、包括しているイメージです。大きく異なる点は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)がコミュニケーションに重点を置いている点です。実際にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を実験的に行った報告によると、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を行うことによって人生の最終段階だけでなく、日常の医療やケアへの満足度も向上したという結果が出ました。アドバンスディレクティブのようにただ治療についての方向性を指示書として書くことではなく、コミュニケーションを通じてみんなで取り組んでいくことが必要と言えるでしょう。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)のやり方

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)にはさまざまなやり方がありますが、ここではその一例を紹介いたします。

しかし、実際には形通り行われるわけではありません。急性の患者もいれば、慢性の患者もいて、人それぞれ病気の進行や老化のスピードは異なるため、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を行うタイミング(注1)も人によって変わってきます。あくまでひとつの目安にはなりますが、臨機応変の対応が求められるでしょう。
※実際にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を実践している、相模原の特別養護老人ホームの施設長・大塚さんの記事はコチラ

おわりに

理想的なアドバンス・ケア・プランニング(ACP)のコミュニケーションを取れる場所は、まだまだ多くありません。医療従事者ですら、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)についてあまり知らない人も多いという話もあります。コミュニケーションを円滑にするためには、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)のファシリテーション能力が重要になりますが、医療やケアの専門家が必ずしも良いファシリテーターというわけでもありません。必要になってくるのは、より多くの人に知ってもらい、実践する人が増えることにより、より良いコミュニケーションを取ることができるようになることです。この記事を読んで、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

 [注]
1)ACPを行うタイミングに関しては多くの議論がありますが、早すぎても不明確、遅すぎても行えないというACPの課題はいまだに解決が難しいです。ひとつの方法として、サプライズクエスチョンと呼ばれるものがあり、これは「この人が1年以内に亡くなったら驚きますか?」という質問を問いかけ、驚かなければACPを含む緩和ケアをはじめるというものです。

参考文献

会田薫子 2017;「意思決定を支援する―共同決定とACP」『医療・介護のための死生学入門』,清水哲郎・会田薫子編,東京大学出版会
大城京子・清水直美・瀬口雄一郎、長江弘子・西川満則・横江由理子, 2020;『生活の場で行うアドバンス・ケア・プランニング―介護現場の事例で学ぶ意思決定支援』,南山堂
角田ますみ編, 2019;『患者・家族に寄り添うアドバンス・ケア・プランニング―医療・介護・福祉・地域みんなで支える意思決定のための実践ガイド』,メヂカルフレンド社
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」

Illustration: banbino_e

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市川岳

市川岳

アンドフォーアス株式会社

国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科哲学専攻卒業後、葬儀社(むすびす(株)旧:アーバンフューネスコーポレーション)へ入社。エンディングプランナーとして、年間約200家族との打合せ・葬儀を執り行うとともに、死生学カフェや死の体験旅行など様々なイベント企画を通じて「死へのタブー視」と向き合っている。 現在は上智大学大学院実践宗教学研究科死生学専攻の博士課程前期1年目で、死とテクノロジーが合わさった「デステック」における倫理的問題のアセスメントを中心に研究を進めている。

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