- 死生観インタビュー
- 30代
1年後に人生が終わるとしたら?人生を変える出会いと別れ
「人生は取捨選択の連続」と話すikuminさん(37才)。知人との別れをきっかけに生まれた、ご自身の人生観・死生観の変化について伺いました。
ーー今回、&for usの死生観インタビューにご参加いただいた経緯について教えてください。
昔からアートが好きで、毎月一度はいろいろな展覧会に行っています。
先日「END展」に行ったのですが、そこで“死生観”に興味を持つようになりました。そんななか『&for us』のインスタグラムで死生観インタビューが募集されているのを見つけて、自分自身の死生観と向き合うきっかけになるかなと思い、参加しました。
ーーご自身の死生観は、どのようなものですか?
「1年後に死ぬとしたら」という仮定が、私の死生観のベースになっているんだと思います。
きっかけは、私が20代半ばのとき。
アルバイト先の知り合いに40代くらいの方がいて、定期的に連絡も取る仲でした。たまたま彼女と1年ほど連絡を取らない時期があったのですが、あるとき急に別のバイト仲間から連絡があり、その方が病気でお亡くなりになったことを知らされました。
1年前は病気もなく健康だったのに、今はもうこの世に居ないという現実に、すごく衝撃を受けました。
亡くなった彼女自身も、この1年間でこんなにも人生の状況が変わるなんて、まったく予想していなかったと思います。
自分にとっても大きなショックでしたし、同時に「1年後に死ぬとしたら、今をどう生きるべきなのか」を強烈に考えはじめました。
それからはお金を溜めて大学に入り直したり、仕事を変えたりと、やりたかったことをすぐ行動に移すような人生になったと思います。
時間が経って環境や状況も変化し、「1年後に死ぬとしたら」ということを意識する強さは少し変わっていますが、それでも今もなお自分の死生観のベースにはそのようなテーマがあります。
一方で、もちろんどんなに頑張っても1日でできることやひとりでできることには限界があることもわかっています。無理を続けても意味はないので、良い状態で日々を積み重ねていく、ということを最近は意識しています。
ーーご自身の死生観や人生観に影響を与えた作品、というものはありますか?
大学生の時に読んだ、辻仁成さんの『サヨナライツカ』という本が印象に残っています。
海外に単身赴任した主人公が、現地の日本人女性と恋に落ちていく物語です。主人公は婚約をしているので、いわゆる不倫ですね。結局主人公と現地の女性は別れてしまうのですが、それでもお互いのことが忘れられず、20年以上経ってから再会することになります。
不倫をしてしまうような身勝手なところも、結婚して20年以上経っても別の人のことを忘れられなかったところも、人間くさいなあと共感せずにはいられません。
人の出会いと別れをテーマした作品で、出会いはもちろん、別れというものも人生に大きな影響を与えることを教えてくれました。
別れたからこそ、前を向かなければいけない。その人の分まで生きなければいけない。そんなことを教えてくれます。
あとは、GLAYの『pure soul』という曲が好きです。
夢と現実の間でもがいている、大人になっていく自分や仲間に向けて書かれた曲で、
「生きてゆく為の賢さを 今ひとつ持てずにいるの」と誰かがふいにボヤいても それはみんな同じだろう
細やかな喜びの為に いくばくかの情を捨てた時 夢を大事にしろよなんて いつからか言えなくなっていた
という歌詞が胸に刺さります。
人生は取捨選択の連続だと思っていて、選択を迫られる時はいつもこの曲を思い出します。
ーー「1年後に死ぬとしたら」というお話もありましたが、いわゆる終活をしていますか?
あまり沢山のものを持たないようにしています。
祖父母の遺品整理をしたことがあって、自分はそのうち一部を手伝っただけだったのですが、それでも相当大変だった思い出があります。
自分は遺された家族に迷惑をかけたくないですし、たとえば自分が急に倒れて自分以外の人が部屋に入って来たときに、自分のイメージを壊されないようにはしたいと思っています(笑)
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。インタビューはいかがでしたか?
質問をいただいたことで、自分の考えや記憶を再確認できました。
ときどき昔のことを思い出したり自分と向き合ったりもしているのですが、今回でまた定点観測が出来たかな、という感じです。
Illustration: banbino_e