- 死生観インタビュー
- 40代
母親の病気で気付かされた、親孝行ができていないという事実。
数年前にお母様が病気で倒れ、自身も最近入院を経験されたというあきらさん(43歳)。ショッキングな経験で気づいた親への思い。そして、入院を機に考え直すこととなった自身の人生観・死生観について伺いました。
ーーお母さまが倒れられたとのことですが、そのときのことについてお話しいただけますか。
6年くらい前のことなんですが、自分が転職先に入社する2日前のこと。そんなタイミングで、母親がくも膜下出血で急に倒れたんですよね。しかも状態もなかなか悪くて、そこから2週間くらい寝たきり。お医者さんからも「植物人間になる可能性もあります」と言われて、ビックリしたしショックでした。転職直後でしたけど、正直、仕事も手につかないような状態で。
その時はじめて「あ、おれって全然親孝行してないな……」と、ふと気づいたんです。
幸い母親の状態は急速に回復していって、今では後遺症もなくピンピンしています。それでも当時の思いがあって、以降は定期的に家族を連れて実家に帰ったりするようになったし、親と電話する頻度も増やしました。
本当はそういうことが起きる前から親孝行しておくべきだったのかもしれないけれど、普段の生活も忙しいし、なかなかそういうマインドにはならなかった。手遅れになる前に気づけて良かったと思います。
ーー大変な状態からご回復されて本当によかったです。ご自身の入院というのは、どのようなものだったのでしょうか?
原因不明なんですが、少し前に体調が芳しくない時期があって。軽い気持ちで病院に診察に行ったら、即入院の指示が出たのには驚きました。
入院をして安静にして。時間もあったから今までの人生を振り返ったり、色々考えてしまったけど、後悔も感じましたね。自分は結構バリバリ働くライフスタイルだったので、「仕事ばっかりしていた人生だったな……」っていう後悔です。
あとは「人生いつ終わるか分からないもんだな」とも。当たり前のことなのに、普段は意識していなくて、入院の期間を通して強く感じるようになりました。
入院を機に、奥さんからエンディングノート(※)を書いて欲しいと頼まれて書きました。
(※)自身の資産や契約サービスなどの情報や、いざという時の医療・葬儀の希望などをまとめておくノート
ーー入院しているタイミングでエンディングノートを書くように促されるのは、どんな気持ちでしたか?
うーん……。本当に死ぬかもしれないので、悲しいという感情ももちろんありましたけど、それとは別の部分で「合理的だよな」と思っている自分もいましたね。何も情報を纏めずに死んだら、家族が困ることは容易に想像できますから。
もしも入院していないとき、元気なときにエンディングノートを書くように頼まれたら、喜んで書くと思います。話していて思ったけれど、奥さんと一緒に書くのもいいかも知れないですね。
ーー入院を通じて「死」を身近に感じたとのことですが、生活は変わりましたか?
入院しているときは後悔とか、退院したらやりたい大きな夢とかについて考えていたけど、
退院してしばらくしたら元の生活に戻ってしまったというのが正直なところ(笑)。体調は完全に回復して、仕事の後に定期的に餃子の王将に行くのが楽しみだし。「死ぬ前に食べたいもの」と聞かれて思いつくのもそれですかね。
ーー日常のなかにある幸せを大事にするのも素敵だと思います。一方、なかなかできていない、「死ぬまでにやりたいこと」はありますか?
イタリアの青の洞窟には行きたいな。
15年前くらいにツアーの予約までしたんだけど、そのときにイタリアでテロか国際問題か何かが起きていて、結局キャンセルになってしまい行けなかったということがありました。今は結婚して子どもも生まれて、なかなか遠くへの旅行なんてできていないけど、死ぬまでには行きたいです。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。インタビューはいかがでしたか?
話してみて、そういえば最近は死を意識せずに生活していたなと気づきました。
改めてこういう機会をもらって、青の洞窟に行きたいとか、忘れていたやりたいことが明確になったし、自分の好きなものを再確認する機会になりました。ありがとう。
Illustration: banbino_e