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海外エンディングビジネス紹介②堆肥葬サービス「Recompose」

海外のエンディングビジネスを紹介していくシリーズコラム。
第二回はアメリカで堆肥葬(注1)を推進している「Recompose」というサービスについてご紹介します。
実際にどのような会社が、どのようにサービスを展開しているのかを見ていきましょう。

※HPより転載する画像の一部は、Google翻訳を使ってウェブサイトごと翻訳しています。翻訳の都合上、日本語表現の誤用が散見される可能性がありますがご了承ください。

ポップなデザイン(HPより翻訳して転載)

Recomposeは米国ワシントン州のシアトルに拠点を置く、2017年創業のパブリック・ベネフィット・コーポレーション(注2)です。同社は従来の埋葬や火葬に代わる、環境にやさしい埋葬方法を目指し、新しく堆肥葬というものをつくりました。
これは、ただ埋めるのでも燃やすのでもなく、身体が自然に分解されて土に帰っていくというもので、自然志向の人びとが増えている昨今注目されています。
過去にはベンチャーキャピタルを使わずに1700万ドル(日本円で約23.5億円、2023年5月現在)の投資も受けており、さらに現在は500万ドル(日本円で約7億円、2023年5月現在)を集めるクラウドファンディングを行うなど、まさに右肩上がりに成長している企業といえるでしょう。

中央左にいるのがCEOのスペード・カトリーナ氏(HPより転載)

サービス内容は、前述の堆肥葬のためのプロセスやそれに伴うセレモニーの運営、また悲嘆を持つ家族へのサポートなどです。米国では州により法律が異なり、現在はRecomoseの会社があるワシントン州をはじめ、コロラド州、オレゴン州、バーモント州、カリフォルニア州、ニューヨーク州の6つの州で堆肥葬は合法になっています。そして、Recomposeでは法律の専門家とパートナーシップを結びながら、他の州での堆肥葬の合法化を進めているそうです。

身体を土に変えたものを入れる容器(HPより転載)

Recomposeが提供している堆肥葬、気になるお値段も明瞭に提示しています。その価格は7,000ドル(日本円で約97万円、2023年5月現在)です。70回払い、28回払い、14回払いの月額サブスクリプションモデル、もしくは一括での決算が可能です。
アメリカでの土葬の費用が平均7,848ドル、 火葬の費用が平均6,970ドルなので、平均的な価格といえるでしょう(注3)。ただし、ご遺体との最期の別れのセレモニーを行う場合、オプション料金が発生するようです。

オプションの一例。参加者でキャンドルにライトを付けるなどの儀礼を行います(HPより転載)

堆肥葬は以下のように行われます。

1. 亡くなったことをRecomposeに通知する
2. Recomposeがご遺体を引き取りの手配をする
3. ご遺体を木片やワラとともにステンレス鋼のカプセルのような器に入れる
4. 微生物が5~7週間かけてご遺体を分解していく
5. 器の中に残ったステントや人工関節などを取り除き、3~5週間かけて土にする
6. 出来上がった土を小さな容器に移し、受け取る(注4)

堆肥葬のプロセスを表したイラスト(HPより転載)

ユーザーの多くは自然に帰りたいという要望を持っており、また環境問題に意識が高い人が多いとのこと。実際に、堆肥葬を行うと二酸化炭素の排出を抑えられ、埋葬や火葬の8分の1のエネルギーのみが必要になるそうです。こうした自然回帰の考え方や、地球環境に優しい方法は、アメリカだけではなく日本でも少しずつ増えてきています。

残念ながら、Recomposeでは日本や他の国からの受け入れはおこなっていません。また、すでに日本でも「循環葬」という名前で、新たなるサービスが誕生しようとしていることが話題になっていますが、まだ法律的にアメリカのように遺体をそのまま自然に返すというのはなかなか難しいようです。

しかし、いつの日か新しい選択肢としての堆肥葬が日本でも行われるようになるかもしれませんね。

[注]
1)コンポスト葬などと呼ばれることもあります。
2) アメリカの企業形態のひとつで、公共利益を重視し、社会貢献を目的に置いた法人格のこと。
3)2021年 全米葬祭ディレクター協会(NFDA)の調査を参照(2021 NFDA General Price List Study Shows Funeral Costs Not Rising as Fast as Rate of Inflation
4) 出来上がった土は、自然保護区域や森、ガーデンに使用可能だそうです。

 

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市川岳

市川岳

アンドフォーアス株式会社

国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科哲学専攻卒業後、葬儀社(むすびす(株)旧:アーバンフューネスコーポレーション)へ入社。エンディングプランナーとして、年間約200家族との打合せ・葬儀を執り行うとともに、死生学カフェや死の体験旅行など様々なイベント企画を通じて「死へのタブー視」と向き合っている。 現在は上智大学大学院実践宗教学研究科死生学専攻の博士課程前期1年目で、死とテクノロジーが合わさった「デステック」における倫理的問題のアセスメントを中心に研究を進めている。

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