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成り立ちから、その日することまで。今さら聞けない「お彼岸」のこと
仏事のプロに聞く、お彼岸のイロハについて
夏の暑さも少しずつおさまり、そろそろお彼岸の季節が近づいてきましたが、皆さんはこの「お彼岸」について、どれくらい知っていますか? なぜ、春分の日と秋分の日なの? そもそも何をする日なの? ぼたもちやおはぎをお供えする理由は? など。そんな、今さら聞けないお彼岸の知識について、お墓や墓石、仏壇、仏具の販売などを行うメモリアルアートの大野屋で仏事アドバイザーを務める、杉山奈緒さんにお話をうかがいました。
「そもそもお彼岸の語源はサンスクリット語の『パーラミータ(波羅密多)』の訳で、日本語では『到彼岸(とうひがん)』を意味します。煩悩や迷いの世界であるこの世にいる人びとは、『六波羅蜜(ろくはらみつ)』と呼ばれる修行をすることで現世から悟りの世界である彼岸(浄土)へ到達することができるという教えがあり、要するに定められた期間に仏様のご供養をすることで、極楽浄土に行くことができますよという風に考えられているわけです。お彼岸の期間は3月の春分の日と、9月の秋分の日を中心に、それぞれ前後3日間、計7日間ずつ。春分の日と秋分の日はそれぞれ『お中日(おちゅうにち)』、初日を『彼岸の入り』、最終日を『彼岸の明け』といいます」
仏教を信仰する他の国ではこの時期に先祖供養を行うことはなく、日本独自の文化として馴染んできたお彼岸。その歴史は古く、一説では1200年以上の歴史があるとされています。しかし、なぜ春分の日と秋分の日なのでしょうか?
「春分の日と秋分の日は、昼と夜の長さが同じになる日で、太陽が真東から真西へ沈む日。仏教では『西方浄土(さいほうじょうど)』といって、西側に阿弥陀様のいる極楽浄土があるとされているため、西方浄土に往生できるよう、この日にご供養しましょうという習わしになっているんですね」
お彼岸といえば、一般的には「お墓参りに行く日」という認識の方も多いと思いますが、この期間で何か特別なことをすべきなのでしょうか?
「お彼岸にはお墓やお仏壇をきれいにして、ご先祖や亡くなられた方を供養しましょうというのが一般的です。また、お寺さんとご縁のある方は、お寺などで行われる『彼岸会(ひがんえ)』に訪れたりします。お盆のように何か特別なことをするわけではありませんが、いつもより少しいいお花をお供えしたり、おはぎやぼたもちをお供えされる方も多いですね」
お彼岸のお供えの定番といえば、ぼたもちとおはぎ。春と秋で年に2回あるお彼岸ですが、お供えのマナーなどもあるのでしょうか?
「諸説ありますが、一説には、春はぼたんの花にちなんでぼたもちを、秋には旬である萩の花になぞらえておはぎをお供えすることが挙げられます。ただ、ぼたもちとおはぎをお供えする際の明確なルールがあるわけではなく、地域やお店によっても異なります。個人の方の好みなどにあわせてお供えしてあげる方が喜ばれるかもしれませんね」
2022年の秋のお彼岸は9月20日から9月26日まで。家族でお彼岸の予定について話し合うこともまた、故人を想う良いきっかけとなるはずです。
TEXT:中澤範龍
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杉山奈緒
メモリアルアートの大野屋において、年間2万6千件を超えるお葬式やお墓、手元供養の問い合わせ、無料仏事相談などに対応する「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーを務める。葬儀・お墓・仏壇・終活・仏事マナーに明るく、お墓ディレクター2級、仏事コーディネーターの専門資格も保有する。