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悲しむことが許されない? 「公認されない悲嘆」

こんにちは。&for usのがくです。
今回は「公認されない悲嘆」という概念を紹介します。
公認されない悲嘆(disenfranchised grief)とは、社会的に認められにくいとされるグリーフのことです。これはグリーフケアという、死別を含む喪失経験者に対してのケアをする分野で使用される概念です。

英語の「disenfranchised」というのは、よく飲食店などで耳にするフランチャイズ店などと同じフランチャイズという言葉に、「dis」の接頭語が付き否定形になっているものです。
フランチャイズには特権や権利、また参政権や投票権といった意味があり、飲食店の場合、名前を借りて営業する権利を与えられたお店のことをフランチャイズ店と呼ぶというわけです。
それに否定の接頭語がつくことにより、「権利を剥奪された」という意味になります。
そしてグリーフ、つまり悲嘆という単語と並び、日本語では「公認されない悲嘆」という訳語を使うことが一般的となりました。

この概念を提唱したのは、ケニス・ドカというアメリカの老年学の学者で、ドカは公認されない悲嘆を以下の5つに分類しました。

①非伝統的なものや非認可のものなどを含む認識されづらい関係
(例)同性愛のパートナー、婚外恋愛関係、友人、同僚、元配偶者など
②重要さが認められず承認されづらい喪失
(例)流産、中絶、ペットの喪失など
③死の理解や悲嘆の経験が不可能だと社会的に思われている除外された悲嘆者
(例)幼児、高齢者、発達障害者、精神障害者など
④スティグマ化させたり、不安を想起させるような死因
(例)エイズによる死、自殺、死刑、コロナによる死など
⑤適切な喪の服し方が社会的に規定されているときの多様的な悲嘆方法
(例)泣けない人の悲嘆、過度な感情をあらわにする人の悲嘆など

このような公認されない悲嘆は、結果として次のようなことを引き起こします。ひとつは、感情的なトラブルが続く危険性を大きくするということです。悲しみ、自責、怒り、孤独などの一般的な悲嘆の感情を抑圧し、きちんと表出しないことによって、それらの感情がより激しくなると言われています。そしてもうひとつは、悲嘆者への社会的サポートが行き届かないことによる悲嘆経験の複雑化です。社会的なスティグマ(そうした印象を持たれること)によってのけ者にされた悲嘆者は、悲嘆のプロセスと向き合うのに時間を多く要するでしょう。

以上、まだまだあまり認識されていない概念として、今回は公認されない悲嘆を紹介しました。
みなさんの周りにも、公認されていない悲嘆を抱えた人がいるかもしれません。そういった方々へのケアも、これからの時代必要になっていくでしょう。

参考文献
Doka, Kenneth J., 1989;Disenfranchised grief: Recognizing hidden sorrow,Lexington.
Doka, Kenneth J., 2002;Disenfranchised grief: New directions, challenges, and strategies for practice,Research Press.

記事

市川岳

市川岳

アンドフォーアス株式会社

国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科哲学専攻卒業後、葬儀社(むすびす(株)旧:アーバンフューネスコーポレーション)へ入社。エンディングプランナーとして、年間約200家族との打合せ・葬儀を執り行うとともに、死生学カフェや死の体験旅行など様々なイベント企画を通じて「死へのタブー視」と向き合っている。 現在は上智大学大学院実践宗教学研究科死生学専攻の博士課程前期1年目で、死とテクノロジーが合わさった「デステック」における倫理的問題のアセスメントを中心に研究を進めている。

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