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相続税は、個人が被相続人(亡くなられた人)から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に対して課される税金です。
相続税が発生するかどうかを判断するためには、「相続する財産の金額」と「相続人の人数」の情報が必要となります。相続税計算の概要についてはこちらの記事(家族の安心のためにも。事前に把握しておきたい、相続税のこと。)をご参照ください。
さて、ご実家を含む不動産(土地及び建物)については、土地と建物それぞれについて金額を確認することとなります。
法人税法第22条において、相続財産の評価は、被相続人が亡くなった日などのときにおける「時価」(※注1)で行うと定められており、一般的なケースでは国税庁の定める「財産評価基本通達」に従って計算することになります。
以下では「財産評価基本通達」に定められている内容を説明いたします。
まず、土地(宅地)については、「路線価方式」または「倍率方式」によって評価します。
路線価が定められている地域では「路線価方式」を、路線価が定められていない地域では「倍率方式」を用いて評価します。傾向として、街の中心部(市街地)部分は路線価が定められていて、郊外については路線価が定められていないケースが多いようです。路線価を確認するための「路線価図」や倍率方式の計算に用いる「評価倍率表」は、国税庁のHPから確認することができます。
それでは、「路線価方式」「倍率方式」それぞれについて、評価額の計算方法を見ていきましょう。
<土地の評価(1)路線価方式>
路線価方式とは、道路ごとに定められた相続税路線価に土地の面積を掛け合わせて土地の相続税評価額を算出する方法です。
計算方法は下記の通りです。
相続税評価額 = 路線価 × 土地の面積( × 補正率・加算率(※注2))
実際の計算方法ですが、まずは路線価図から、対象の土地が接する道路の路線価を見つけます。各道路には数字とアルファベットの組み合わせが割り振られていますが、まずは数字の部分のみを参照します。
例えば「300D」という記載がある場合は路線価は300千円(300,000円)、「370C」という記載がある場合は路線価は370千円(370,000円)となります。(※注3)
この路線価に対象土地の面積をかけると、評価額が算出されます。
例えば対象土地が路線価図上の「300D」の道路に設置する200㎡の土地だった場合、対象土地の評価額は
300千円(300,000円) × 200㎡ = 60,000,000円
となります。
<土地の評価(2)倍率方式>
倍率方式の計算方法は下記の通りです。
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
固定資産税評価額は、土地所有者の手元に毎年届く固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書で確認することができます。(※注4)
また、倍率に関しては評価倍率表で確認ができます。
(エリアごとに「1.1」や「1.2」などと書かれている、数字が倍率となります。)
例えば、対象土地の固定資産税評価額が20,000,000円で、評価倍率が1.2だった場合、その評価額は
20,000,000円 × 1.2 = 24,000,000円
となります。
<建物の評価>
建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
相続税評価額 = 固定資産税評価額
固定資産税評価額は、建物所有者の手元に毎年届く固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書で確認することができます。
簡単な計算方法は以上となります。
なお、相続財産が他人に貸している土地や建物(貸宅地や貸家)である場合や他人の土地を借りている(借地)場合など、所有権以外の権利である場合には別途の計算が必要となりますが、今回のご相談においては完全所有権の不動産とのことですので、説明を割愛させていただきます。
実際に土地や建物の相続税評価額を算出するにあたってはより細かい規定を参照する必要もありますが、まずは上記の基本的な算出方法を用いて評価額を把握するところからはじめてみてはいかがでしょうか。また、より正確な評価額を算出されたい方やご不明点がある方は、専門家への相談を是非ご検討ください。
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参考記事:実家の相続問題は意外と多い!?実家を相続する場合、まず何からすべき?
(※注1)ここでいう「時価」とは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額とされ、一般的なケースでは国税庁の定める「財産評価基本通達」に従って計算することになります。なお、特殊なケースでは不動産鑑定士の実施した鑑定評価額によることもあります。
(※注2)土地の間口、奥行、地形等で利用しにくい土地は一定の方法により評価額が低くなります。逆に、二つの路線に面している角地などは、土地の利用価値が高くなるため評価額も高くなります。
(※注3)アルファベットに関しては借地権割合を示していますが、今回のご相談において借地権を考慮する必要は特にないため、本記事では説明を割愛します。
(※注4)固定資産税納税通知書・課税明細書が万が一紛失もしくは見当たらない場合は、不動産が所在する各自治体で再発行を行える場合があります。また、各自治体で「固定資産税評価書」を発行してもらうことにより確認することもできます。詳しくは各自治体にお問合せください。
出典:国税庁ホームページ「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」 https://www.rosenka.nta.go.jp/
この回答の監修
税理士:鈴木 英示
鈴木英示会計事務所
公認会計士、税理士。大学卒業後、上場企業の経理部門で実務に携わった後、監査法人に入所。2020 年に独立し東京都板橋区に鈴木英示会計事務所を設立。個人向けに資産税(相続・贈与・譲渡)申告や税務相談などのサービスを提供している。