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Q.生前贈与って何? どうして節税になるの?

60代です。同世代の同僚から、終活の一環で子どもに生前贈与をしているという話を聞きました。 どうやら節税メリットがあることから生前贈与をしているようですが、そもそも生前贈与の仕組みから教えていただけますか?

  • 生前贈与
  • 相続
  • 税金

Answer.

相続税の節税対策をする方法の中で、特に取り組みやすいもののひとつが「生前贈与」です。
亡くなる前に財産を渡すことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができる仕組みです。

節税対策にもなりますし、子育てなど、資金を必要としている世代に贈与することによって親世代の財産を有効に活用することができます。

個人間で財産の贈与が行われる場合、財産を受け取る側には贈与税が課されます。贈与税は相続税よりも税率が高くなりますが、以下の場合には相続をするよりも生前贈与を行った方が税負担が少なくなります。

<ケース①:「暦年課税」を活用した贈与>

贈与税は、基本的に受贈者(財産を受け取る方)に対して、毎年の1月1日から12月31日までに受け取った財産の合計額に応じて課税されます(この仕組みを「暦年課税」といいます)。この年間の贈与財産の合計額が高くなるほど税率が高くなるのですが、年間110万円までは贈与税はかかりません(「基礎控除」といいます)。

この基礎控除を活用することによって、相続税よりも負担を少なくすることができます。具体的には、毎年110万円の範囲内で贈与を受ければ贈与税は発生しませんし、110万円を超えても、超えた金額が200万円までの範囲であれば税率は10%となりますので税負担を少なく抑えることができます。
例えば、毎年210万円の贈与を行う場合、110万円を超える部分(100万円)に対して10%(10万円)の贈与税が課されます。

なお、受贈者が相続時精算課税の申請をしなければ暦年課税を選択したことになります。

<ケース②:相続時精算課税>

「相続時精算課税」は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子どもや孫へ贈与する場合に選択することが可能な制度です。「相続時精算課税」を選択すると、ケース①の「暦年課税」とは異なり、受け取った額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税がかかりません(2,500万円を超える部分には一律20%の税率で贈与税がかかります)。

ただし、「相続時精算課税」を選択して贈与を受けた財産は相続時に改めて相続財産としてカウントされ、相続税の計算対象となる点に注意が必要です。生前に支払った贈与税は戻りますが、相続税として支払い直す(「精算」する)ことになります。

「相続時精算課税」は、相続財産が相続税のかからない範囲の金額である場合や、将来に値上がりが見込まれる財産を早期に贈与したい場合などに活用することができます。

なお、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の基礎控除(110万円)の利用はできません。

 

相続税対策としていちばんシンプルなのは、年間110万円が非課税となる「暦年贈与」の活用です。例えば、子ども2人に毎年110万円ずつ贈与すると、10年間で2,200万円を無税で贈与することができるため、結果的に将来の相続財産が2,200万円減少することになります。

節税効果については、相続財産の金額や法定相続人の人数によって変動しますが、例えば課税される相続財産が9,000万円で法定相続人が子ども2人であり、この2人に等しく贈与と相続を行う場合、相続財産が2,200万円減少すると230万円の節税効果が得られることとなります。

<参考:相続税の税率(出典:国税庁)

以上が基本的な生前贈与の方法になりますが、これらの他にも使途を限定して贈与をすると税金が優遇される以下の制度がありますので検討してみましょう。いずれも令和5年3月31日までの贈与が対象となります。

  • 「住宅取得資金の贈与」
  • 「教育資金の一括贈与」
  • 「結婚・子育て資金の一括贈与」

ただし、生前贈与については十分な準備がなされないと税務署から否認されたり、定期贈与(注)とみなされて贈与税が追加で課税されてしまうケースもあります。
リスクの少ない形で生前贈与を行うためにも、専門家に相談することをぜひご検討ください。

 

『&for us』事務局及び提携士業事務所では、
生前贈与などの相続税対策を含む、終活や相続関連のご相談を受け付けております。
ご希望の方は、こちらのフォームよりお申し込みください。

 

参考記事:家族の安心のためにも。事前に把握しておきたい、相続税のこと。

 

(注)「定期贈与」とは、定期金給付契約に基づく贈与のことで、毎年一定額の贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、その約束をした年に、一定額の贈与を受ける権利(定期金給付契約)の贈与を受けたものとして、その契約の対象となる合計額(例えば毎年100万円を10年間にわたって贈与する契約であれば、1,000万円)に対して贈与税がかかります。

この回答の監修

税理士:鈴木 英示

税理士:鈴木 英示

鈴木英示会計事務所

公認会計士、税理士。大学卒業後、上場企業の経理部門で実務に携わった後、監査法人に入所。2020 年に独立し東京都板橋区に鈴木英示会計事務所を設立。個人向けに資産税(相続・贈与・譲渡)申告や税務相談などのサービスを提供している。

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