- 死生観インタビュー
- 30代
死んだら人生は終わるが、つながりは終わらない。本から学んだ人生の指針
アメリカのカリフォルニアでジュエリービジネスをされているAsukaさんに、一冊の本から学んだ人生における大切なことについてお話しいただきました。
ーーご自身の人生観や死生観に影響を与えた本を教えてください。
ミッチ・アルボムの『天国の五人』という本から、人生の指針となるようなことを学びました。
主人公であるひとりの老人が事故で亡くなるところからはじまる、いわば終わりからはじまる物語です。自分の人生は無駄だったのかと考えていた主人公が、死後の世界で待つ5人の話を聞きながら人生の謎解きをしていき、自身が生きていた意味を理解していくというお話です。
最初にこの本を読んだのは確か20歳くらいのときで、漠然と自分の人生の答えがわからなかった時期でした。この本に出会ってから人生を考える上での指針を知ることができました。
例えば「人は人に生かされ、また同時に人を生かしてもいる」ということ。私は現在、アメリカでジュエリーブランドを立ち上げてビジネスをしていますが、完成したものを手にする方々に対してと同じように、ジュエリーが出来上がるまでに携わっている方々の人生の背景にも向き合うことをしています。
それは、この本に書いてあるような「生かし、生かされ」ということを意識しています。本当の満足というのは、他人から与えられるものではなく、自分が人にギブできるものから得られるものだと考えています。自分の微力な行動でも、それが積み重なって結果的に未来に繋がっていけたらと思っています。
また、「生きている間に一度も面識がない人も、実は自分に関与して、影響を与えていることがある」ということも学びました。ジュエリービジネスをやっているなかで、多くの人びとの人生のストーリーを見てきました。ジュエリーは人の想いを形にしているもので、本来目に見えないものを形あるものに変えています。
そしてそれは、代々受け継がれていくこともあります。そうやって、人間のつながりが脈々と広がっていくような気がします。だからこそ、自分自身がこの世から消えたとしても、この世に残っていく価値を残したいと思います。
同じ著者の作品『モリー先生との火曜日』の方が、もしかしたら有名かもしれません。難病で身体が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患ったモリー先生と、その弟子の著者が、先生の死の近づきを通して、自分自身の死について考えるようになっていくお話です。死を学ぶことで、どのように生きるかを学べる、とても良い本だと思います。
ーー利他的精神はとても大事なことですね。そんなAsukaさんは、人が死んだらどのようになると考えていますか?
「死んだら人生は終わるが、つながりは死んでも終わらない」ということを、先ほどのミッチ・アルボムの本から教えてもらっており、肉体が滅びても魂は生き続けていくと考えています。
こうした考えは、実体験とともにより深まっています。
昨年末、友人との死別を経験しました。アメリカで出会った友人でしたが、訃報を聞いたときは悲しみと虚無感で涙が止まりませんでした。
しかし、その後改めて考えてみると、アメリカで彼女と過ごした時間、楽しかった思い出を鮮明に思い出すことができます。
つまり、その友人の人生は死を持って終わったとしても、彼女と私の間にある繋がりは生き続けていくということだと、そう思います。
その友人と同じように、いつか自分にも死が訪れます。自分がこの世の中から消えたとしても、後世へと引き継がれていくような価値を生み出したい、残したい、と考えています。
ーー素敵な考えですね。世界的にビジネスをされているAsukaさんですが、死ぬ前にどこか行きたい場所はありますか?
ボリビアのウユニ塩湖に行ってみたいです!
「天空の鏡」と形容される幻想的な風景が、まるで自然の力が生み出した宝のようでとても魅力を感じます。一度は訪れたいと思いながら一度も機会を作れずじまいなので、死ぬまでに行ってみたいです!
息子が今2歳なので、息子が大きくなったら一緒に行こうかなと考えています。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
インタビューはいかがでしたか?
改めて話してみると、自分の思いに向き合うことができました。そうした思いを大事にしたいなと思います。
『アメリカン・ビューティー』という映画の格言に「今日という日は、残りの人生の最初の日である」というものがあります。過ぎ去った日々は取り戻せないので、どんなに忙しくても行動を先延ばしにせずに、これからも一日一日を大切に生きていきたいと思っています。
Illustration: banbino_e