人生をよりよく生きる ライフ&エンディングメディア

Interview

Back
  • 死生観インタビュー
  • 20代

「死にたい」と思ったことがある。社会から孤立した経験を持つけんたさんの死生観

かつて「死にたい」と思ったことがあると語るけんたさんの死生観をお伺いしました。
※本記事は自死に関するセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

ーー死にまつわるご自身の経験を、差し支えない範囲で教えてください。

自分は死にたいと思ったことがあります。
中学校から高校の時期に学校に通えていない時期がありました。いわゆる不登校です。
家族しか交流する人がおらず、外部の情報が入らない状態でした。
そういうときって社会的にとても孤立するんですよね。なんというか、学校に行っている他の人と自分はぜんぜん違う、みたいな。自尊心がほとんどない状態でしたね。
そんな自分に対して、親はどうしたらいいのかと悩んでいました。
そういう親の姿を見ると、なんだか「生きていてもそんなにいいことないんじゃないかなぁ」と思うようになりました。

もちろん、自分が死んだら悲しむ人や困る人がいたり、迷惑をかけることも分かっていたんです。なので、死ぬという選択がベストだとは思わなかったけど、切羽詰まった状態だとそれしかないと思うこともありました。

実は日本の仕組みとして、中学校は義務教育なので校長先生がOKと言えば学校に行かなくても卒業はできるんです。しかし高校からは単位制になるので、単位が取れないと卒業できない。
親が塾を経営していたので、その手前中卒になるのは良くないと思い、高校では出席の最低ラインをキープしながら学校に行っていました。
高校2年から3年の時は少しずつ行く日数が増えていったりもしました。

ーー大変なご経験をされてきたんですね。その後どのように変化していきましたか?

今は大学も出て、仕事をしています。
あの時の経験があるから今の自分があると思います。
というより、不登校になった経験を何かのかたちで活かさないと生きていけないような気がしますね。あれをいい経験だったと思えるように今を生きている、みたいな。

将来的には大学院に入って学び直したり、NPOなどで不登校の子の支援をしたりしたいと考えています。
死についても、自分で考えるだけじゃなくて色々な人の話を聞くこともしたいです。多様な死についての考えを知ることで、自分の人生を生きる上でのヒントがもらえるかなと思うので。めったに話すことのないトピックなので、そういうイベントに参加したりしようかなと思います。

ーーけんたさんは、人が死んだらどうなると思っていますか?

死んだことないから、ぶっちゃけわからないです(笑)。
でも、なんとなく『スターウォーズ』に出てくるフォースみたいな感じかなぁと思っています。
星になるとか、草葉の陰から見守っているというようなのとはちょっと違って。ふわふわと周りにただよっているイメージです。背後霊とか守護霊というものに近いかも。自分は基本的には神様を信じてないけど、初詣には行くし、仏壇にも手を合わせます。

大学生のときにおばあちゃんが亡くなったのですが、おばあちゃん子だった自分は今でも仏壇で手を合わせながら、話しかけたりしてます。そういう風に、困ったときや話したいときに話しかけられる存在になるんだと思っています。

ーーおもしろいですね。けんたさんの死生観に影響を与えた作品などはありますか?

住野よるの小説『君の膵臓をたべたい』です

2017年に映画化もされた小説なのでご存知の方も多いかもしれません。
主人公の男の子と余命宣告を受けた女の子がいて、その女の子の「死ぬまでにやりたいこと」に付き合っていくうちに次第に心を通わせていく物語です。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、命って誰にでも平等に与えられているんじゃないんだなと思いました。そして、自分も死ぬ可能性があることに気がつきました。
見どころとしては、ふたりが関係を深めていくところですね。
命を扱っているので重い話になりそうなんだけど、主人公の女の子は明るくて、病気で数カ月後に死ぬ感じがしない。一方男の子はクラスの片隅で本を読んでいる系の、いわゆるコミュ障みたいな感じで、正反対に描かれています。そんなふたりの心情の変化に注目してみるとおもしろいと思います。

本も映画も両方好きです。最初は、興味があるなら本が良いと思いますが、映画の方が一気に見れるので見やすいかもしれません。本の場合はストーリーだけではなく、最後に行くまで主人公の名前が分からないといった見せ方も面白いです。
映画の場合は、時系列が少し行ったり来たりする感じです。あと、映画は浜辺美波がかわいいです(笑)

ーー色いろなご経験をされてきたけんたさんですが、生きている間に何かやりたいことはありますか?

ギリシャのサントリーニ島に行ってみたいです。
高校生くらいのときに写真を見て、すごい綺麗だなと思いました。大学生のときに卒業旅行で行こうと思っていたけど、コロナの影響で行けなかったのでリベンジしたいです。

あとは、ドイツに行ってビールを飲みながらサッカーの試合を見たいですね。
現地だと、サッカースタジアムに行くまでの道中もファン同士でビール飲みながら話し合うらしいので、それを一回体験してみたいです。
ヨーロッパに行く機会があれば、できたら両方いっぺんに叶えたいですね。

ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
  インタビューはいかがでしたか?

死について話す機会は多くないので新鮮でした。
話してみると、自分の考えを再認識することもできるし、新たな発見もありました。
ありがとうございました。

※本記事は、個人の死生観にもとづき、自死について言及しています。
お悩みの際は、国や地域の窓口で相談が可能です。
厚生労働省公認の窓口はこちら

 

Illustration: banbino_e

インタビュアー

市川岳

市川岳

アンドフォーアス株式会社

国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科哲学専攻卒業後、葬儀社(むすびす(株)旧:アーバンフューネスコーポレーション)へ入社。エンディングプランナーとして、年間約200家族との打合せ・葬儀を執り行うとともに、死生学カフェや死の体験旅行など様々なイベント企画を通じて「死へのタブー視」と向き合っている。 現在は上智大学大学院実践宗教学研究科死生学専攻の博士課程前期1年目で、死とテクノロジーが合わさった「デステック」における倫理的問題のアセスメントを中心に研究を進めている。

Share