- 死生観インタビュー
- 30代
死が怖くて、眠れない時がある。大切な人との別れを通じてリアルになっていく、ゆうとさんの死生観
「死を考えるのが怖い」と正直に話してくれたゆうとさん(31才)に、お話を聞いてみました。
ーー人が死んだら、どうなると思いますか?
あまりイメージがつかないのですが、無になるのでは、とは思っていて。だからこそ死を怖いものとして捉えています。いまでも怖くて眠れないときがありますね。
生まれ変わりがあればとは思いますが、実際には寝ているときの何にも感じていないような感覚が続いていくんじゃないですかね。
ーー「死ぬのが怖い」という感覚は、年齢を重ねて薄れていくケースもあるんじゃないかと思います。ゆうとさんは昔と今で、死に対する思いに変化はありますか?
あまり変わらないです。
大学時代の後輩を亡くしたり、直前まで付き合っていた元カノを亡くしたりと、大切な人との死別経験は同年代より多いんじゃないかと思いますが、それらの経験を通じてむしろ死をよりリアルに感じてどんどん怖くなっている気もします。
あとは最近子どもができたら、少し死が怖くなくなるかもという期待を持ちはじめました。子どもや孫、人生の後輩達に託していくリレーのようなものが、自分にとっての救いなのかもしれません。
ーー死ぬまでにやりたいことについて教えてください。
宇宙から地球を見てみたいです。
壮大な自然を見るのが好きで、南極やアフリカに行ってみたい気持ちもあるのですが、その最高到達点の場所が宇宙だと思います。大自然や世界のなかで、自分の無力さだったり人間の小ささを感じて、すがすがしい気持ちになるような機会が好きなんです。
会社や実生活では自分の行動がすぐに他人や世界に影響を与えてしまい、それがある意味で窮屈に感じるときがあります。死ぬ前にもう一度、自然のなかで自分のちっぽけさを漢字ながらあるがままの自分を自分で受け入れられる、そんな機会が欲しいので宇宙に行ってみたいです。
ーー人生観や死生観に影響を与えた作品について教えてください。
映画だと「The Notebook(君に読む物語)」ですね。
認知症の老女と共に療養施設へ入寮している主人公が、ノートに書かれた物語を彼女へ読み聞かせるというストーリーなのですが、現実にも起きうる話だと思っています。
1人の人間を愛することの素晴らしさや苦しみが描かれており、自分自身と周りの人との関係性を真剣に考えるきっかけになった作品です。
この人と会っていなかったら幸せもないし苦しみも待っていなかったのに、なぜ一緒にいるんだろうとか、考えてしまいますね。
本だと、「不道徳教育講座(三島由紀夫)」が印象に残っています。
弱いものをいじめろとか、できるだけうぬぼれろとか、はやめに童貞を捨てろとか、一般常識とは反対のことをたくさん推奨する変な短編集です。
極端なことばかり書いてあるのですが、実は「悪いことをすることは、悪いことじゃない。悪いことだと思ってやらないことのデメリットもある」というようなテーマが感じられ、もしかして自分は与えられた常識のなかで思考停止しているのかもしれない、と自分自身を疑うきっかけをくれた本です。
ーー本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。インタビューはいかがでしたか?
誰にも言ってなかったこういう話を久しぶりにしました。
自分のなかで整理できた気がしますし、これまでは人に話すことがなかったから言語化できていないモヤモヤ感があったんだなと気づくことができました。
Illustration: banbino_e