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助産師そして看護師として命を見守るピノさんの死生観

助産師・看護師としての資格を持ち、数多くの人の命を見守るピノさん(24歳)に、人生観・死生観についてお話を伺いました。

ーー助産師と看護師の両方の資格をお持ちと伺いました。なぜそうしたお仕事に興味を持ちはじめたのですか?

助産師になろうと思ったのは、命の誕生ってすごい神秘的だなと思っていたことや、温かい出産に立ち会いたい、幸せな家族のスタートを支えたいという思いからです。私は海外に住んだ経験もあったのでもともと国際的な活動にも興味を持っていたのですが、あるとき発展途上国で無償の医療活動を続ける日本の医師・吉岡秀人さんが著作した『死にゆく子どもを救え』と出会って、自分も助産師として、また看護師としても国際社会に貢献できるかを考えるようになり、双方の資格を手にすることに決めたんです。

その本からは、途上国の医療の実情や、医療者の葛藤を知りました。例えばミャンマーやラオス、ベトナムなどでは、地域によって医療が全然ない、もしくはあってもレベルが低く、人びとは毎日を生きるか死ぬかという世界にいます。発展途上国はこういった状況なのかということ、また、吉岡先生が自分の信念をもって救うことに全力を尽くしていたことなどを知りました。国際医療や途上国医療を知らなかったので、ゼロから開拓して現地の人と関係を築いていく描写や、その中で描かれる看護師の役割がおもしろいと思って当時は読んでいました。

ーーすると、将来は国際医療や途上国医療に携わりたいとお考えなんでしょうか?

そうですね。最近はお産の介助を極めたいという思いや、地域での子育て支援にも興味があるので、途上国医療に身を捧げるということはないかもしれません。でも、助産師として国内と国外で境界線を引くことなくグローバルに活躍していきたいという思いは変わっていません。さまざまな現場での経験を積んだ上で、いつか国際機関なども視野に入れてキャリアを考えていきたいなと思っています。

ーー少し話が変わりますが、死ぬまでに行きたいところはありますか?

今まで住んだ土地(ドイツ、イギリス、大船、オランダ、ロサンゼルス)のゆかりの地巡りをしたいです。

ドイツには小学校4年生から6年生の3年間住んでいました。はじめての海外で、自然がいっぱいあって、人びとがあたたかくて、とても住み心地がよくて大好きです。当時の日本人学校の友達とは今でも毎年会っているほどの仲良しです。

中学校3年生から高校1年生まではイギリスに住んでいました。イギリスではインターナショナルスクールに通っていて、授業についていくのが大変だったのですが、同時に人生の転換期でもありました。
きっかけは、ミュージカルのイベントへの参加でした。英語もままならないのにオーディションを受けて、受かっちゃったんですよね。

とても大変で、できないことだらけで泣いていましたが、先生から「なんで私があなたを選んだかわかる?あなたなら必ずできるって信じてるからよ。あなたは素晴らしい。」と言われて、心を打たれましたし自信になりました。

結果としてもスタンディングオベーションをもらうほどでした。無理だと思ったことも、やってみて良かった、不可能なことはなにもないと思えるようになった経験でした。
考えてみるとどこか場所に行きたいというより、今までお世話になった人たちに会いたいというのが強いかもしれませんね。
一人ひとりにお礼を言いたいし、私がどれだけその人のことを尊敬していて大切にしていて感謝しているかを伝えたいです。
色んな人がいるおかげで今の自分があるので、感謝ができる時にお礼を伝えないといけないと思っています。
明日死ぬかもと思って生きているので、なるべく伝えられる時に感謝を伝えています。

ーーとてもすばらしい生き方ですね。そんなピノさんは、死んだらどうなると考えていますか?

魂とか霊とか後世とか、そういうものは実際に存在するものとは思わないけれど、死んだから終わり、という感覚はないです。魂とか霊というものがあっても大丈夫なように、もしくはあると信じてお祈りしたりします。心の中には生き続けるから、それが魂みたいなものなのかなとか思ったりします。
科学的には実存しないと思っていても、亡くなった人たちはみんな同じような空間・場所に行っているようなイメージはあるし、そこから見ているというイメージもあります。天国のおじいちゃんが悲しむよ、とかはわりと納得してしまいます。いないってわかってるのに……。

以前、母に臓器提供を希望したい旨を伝えたら「三途の川が渡れるように臓器は取っておきなさい」と言われたので、三途の川なんてあるかは分からないが、そっちの世界のことは何もわからないのだから取っておいた方がいいのかな、私が先に死んだら母は取っておかなかったら悲しむかも、と思ったので、現時点では提供しないことにしました。

ーー本日はありがとうございました。最後に、インタビューを受けてみての感想を教えてください。

とてもおもしろかったです。自分が話した内容、改めて送ってもらいたいと思うくらい、話してみると考えが整理されるものですね。自分のことだけではなく、色々な人の死生観について話を聞いてみたいと思いました。あと、お世話になった人に、今すぐ会いに行きたくなりました。

Illustration: banbino_e

インタビュアー

市川岳

市川岳

アンドフォーアス株式会社

国際基督教大学教養学部アーツサイエンス学科哲学専攻卒業後、葬儀社(むすびす(株)旧:アーバンフューネスコーポレーション)へ入社。エンディングプランナーとして、年間約200家族との打合せ・葬儀を執り行うとともに、死生学カフェや死の体験旅行など様々なイベント企画を通じて「死へのタブー視」と向き合っている。 現在は上智大学大学院実践宗教学研究科死生学専攻の博士課程前期1年目で、死とテクノロジーが合わさった「デステック」における倫理的問題のアセスメントを中心に研究を進めている。

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